2008.01.28

よく肩こりと間違われる病気に「五十肩」があります。五十肩とは文字通り50歳台の年齢層に多く見られる肩関節の痛みのことです。五十肩は医学用語では「肩関節の拘縮」といい、肩の運動範囲が制限された状態です。戸棚に手が届かない、お風呂場で背中や髪の毛が洗いにくい、引き戸の開け閉めが難しい、エプロンの紐が止めにくいなど、日常生活の様々な制限が生じます。
もともと人間の関節のなかで肩関節はもっとも大きく動く範囲をもった関節です。その構造は
二の腕の上腕骨頭部という腕の付け根の部分を肩甲骨の小さな受け皿のような部分で支えていますが、大部分が関節を取り巻く袋状の靱帯成分で補強されています。
五十肩によって肩の運動が制限される理由はこのような靱帯のコラーゲンといわれる成分が慢性の炎症を起こして正常な状態ではなくなること、すなわち、変性することによると考えられています。治療としては痛みに対しては鎮痛剤やヒアルロン酸の関節注射による対処療法が効果的です。そして痛みが軽くなった時点で運動療法を定期的に行うべきでしょう。
運動療法のコツは勢いをつけて肩を振り回したりして反動をつけるような運動はできるだけ避け、ゆっくり時間をかけて温めた後に静かに一定の位置で腕を持ち上げたまま30秒間ほどおなじ場所で保っておくようなストレッチ運動が大切です。反動をつけるような運動は五十肩の関節にはかえって痛みを起こしてしまうことがあります。
五十肩という俗称は広く知れ渡っているだけに自分で肩周囲の痛みや肩の運動制限を「どうせ五十肩だから」などと自己判断せず早期の治療を適切に行うためにも整形外科を受診して適切な指導をしてもらうようにしましょう。
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2007.11.27

関節が痛くなる病気の代表に関節リウマチがあります。30歳以上の人口の1%にあたる人がこの病気にかかっており、決して珍しい病気ではありません。
ところで、「リウマチ」という言葉を聞いたことのある人は多いようですが、関節が痛くなるだけでは関節リウマチではありません。リウマチを診断するためには、6週間以上の期間で、左右対称に3箇所以上の関節の腫れを認めることなどの診断の基準がいくつかあります。
現在のリウマチ治療で最も大切なことは、如何に早期にリウマチと診断して薬物療法を開始するかということであり、そのための検査方法も進歩しています。診断基準があるというものの、リウマチを早期に診断することは必ずしも簡単ではない場合があります。
まず第1に男性の場合ですが、女性より発病の頻度が3分の1と少なくリウマチを見落とすことがあります。第2に、リウマチの病気のタイプの中には、単関節型といわれる腫れや痛みのある関節が1つだけの場合、回帰型といわれるタイプで関節炎がよくなったり悪くなったりする場合、このようなタイプのリウマチは早期の診断が非常に困難なことがあります。
最後に、従来のリウマトイド因子という血液検査ではリウマチの診断は完全ではありません。関節リウマチの患者さんでも約70%の方が陽性と判定されますが、100%の方が陽性と判定されるわけではありません。たとえリウマチの方でも30%の人は反応が陰性となり、その逆にリウマチでない人も1%から5%の方は陽性となります。従来の血液検査だけではリウマチの判定は不十分であることを理解してください。
現在では、診断法も治療法も目覚しく進歩しています。早期の診断により早期の治療を開始すること、そして関節の痛みをとって変形の進行を如何に押さえ込むかが最も重要です。かかりつけの医師が専門でなければリウマチを専門とする医師を紹介してもらうようにしましょう。
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2007.09.24

手足の切り傷は日常生活でよくある怪我のひとつです。
刃物により切り傷以外には転倒などによる擦り傷、ペットによる噛み傷釘やピンなどによる刺し傷があります。見た目で傷を判断した場合、出血量が多い場合や傷が大きい場合は殆んどの人が医療機関を訪れます。
ところが傷が小さいから、あるいは出血がほとんどないからといって必ずしも傷が直るとは限りません。傷口がふさがっていても、感染といってばい菌が繁殖していることがあるからです。この感染を生じやすい傷の特徴を考えてみましょう。
まず傷の深さがどの程度か、ということです。擦り傷などでは出血も少なく皮膚の表面の傷ですが家庭用の消毒剤やテープで表面を覆って処置をする場合があります。この場合処置を行う前に必ず水道水などの水で傷の表面にある、たとえばアスファルトの粉などの汚れを洗い落とすことが大切です。異物のあるままに傷の表面を覆ってしまうと、ばい菌が繁殖し感染のもとになってしまいます。目で見える異物が自分では取り除けなければ医療機関で局所麻酔をして取り除くことが大切です。かみ傷や刺し傷は皮膚の表面か、あるいは皮膚の下の脂肪や筋肉などの組織に達しているか、いないかの判断がとても重要です。これらの傷は表面の傷口が小さいため皮膚の下に達する場合は殆んど感染してしまうからです。特にペットの噛み傷が指の場合などは腱や骨に達することもあり手遅れになった場合は指を切断しなければならないという例もあります。傷の深さの判断に迷った場合は必ず6時間以内に医療機関を受診してください。家庭で行う傷の処置は傷が深くなく異物がない場合、十分に洗浄して家庭にある軟膏や赤チンなどを塗らず絆創膏のみで傷を覆うことが基本の処置と考えましょう。
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2007.05.20

爪には様々な変形があります。爪の両端が皮膚との境にめり込んだ状態を、いわゆる「まき爪」と呼び、特に足の親趾の爪に多く見られます。爪の周りが赤くはれて痛くなる患者さんがいます。多くの場合このような変形がもともとある人の爪の周りに、ばい菌が入ることで症状が現れます。このようなまき爪の変形の原因として、硬くて小さい靴を履いた場合、バスケットや走り幅跳びなどのジャンプ動作の多いスポーツを行う場合、爪の両端を切り込むような深爪を繰り返す場合などが考えられます。
一度このようなまき爪の変形が生じると爪が肥厚したり、めり込んだ部分に炎症を繰り返し、ひどくなると、うみをもったり、肉芽と呼ばれる赤い盛り上がりが爪の回りにできてしまいます。
予防のためには、爪きりの際に注意すべきこととして、爪の先端部を横にまっすぐ切り、爪の両端の角の部分を切り込まないようにすることです。
赤くはれていた場合、治療としては入浴をためらうことなくお湯につけて清潔に洗うことが大切です。それでも肉芽と呼ばれる赤い盛り上がりが、なかなか直らない場合は医療機関として形成外科、皮膚科あるいは整形外科に行けばよいでしょう。
その場合、医師の判断で手術が必要なこともあります。手術は足の趾に局所麻酔を行い、肉芽および皮膚の一部、めり込んでいる爪、爪の根本の部分である爪母といわれる部分をひとかたまりに切除する方法が根本的な治療です。まき爪の変形が軽い場合は爪甲といわれる爪の表面の硬い部分だけを縦に部分的に切除する対処的な処置もあります。最近は爪の先端部に形状記憶合金から作られた細い針金を通して爪の形を治す治療もあります。これは手術のように麻酔も必要なく短時間で行えることが特徴です。何度も繰り返す爪の周りの痛みについては自己判断をせず、一度は医師の診断を受けてみると良いでしょう。
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2007.03.25

日常の外来で患者さんが症状を訴える時に「しびれる」という表現を使うことは数多くあります。患者さんの「しびれる」という言葉から医師が連想する病気は脳・脊髄および末梢神経疾患による運動や感覚障害です。
ところが実際は
セラミド不足などによる乾燥肌や角質成分の障害による皮膚に由来する場合
振動や立ち仕事また手を握る労働などによる手足の筋肉に由来する場合
動脈閉塞や静脈炎など血管の血流障害がある場合
糖尿病、ビタミン欠乏、膠原病などの内科疾患に由来する場合
などの様々な疾患が背景にあることがあります。
整形外科に関わる疾患の中で多い病気は頚椎症といわれるくびの病気
胸郭出口症候群といわれる鎖骨周囲の病気、肘部管症候群といわれる肘の病気
手根管症候群といわれる手のひらの病気。以上の4つの病気がしびれを引き起こす代表的なものと考えられます。
どこの診療科にかかるべきか迷った時には、首、肘、手首に痛みを伴うかどうかということがポイントになります。しびれる感覚以外に痛みを伴う場合はまず整形外科を受診することが勧められます。また両手のしびれを脳卒中の始まりではないかと心配して受診する患者さんがいらっしゃいますが、脳神経障害による手足のしびれはほとんどの場合に右か左かの片方に症状が発症します。
いずれにせよ、しびれを自覚して医療機関を訪れる時は、これまでの自分の既往歴、たとえば高血圧や糖尿病などの治療状況、また現在服用している薬などの情報をある程度把握して、問診の際にはしっかりと答えられるようにしておくことが大切です。
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2007.01.24

整形外科に訪れる患者さんは肩こりを訴えることがよくあります。
「肩こり」と一口に言ってもこれは病名ではありません。
肩こりは文字どおり肩の周囲の僧帽筋という筋肉が緊張して筋肉が硬くなる症状のことを言い表しています。肩こりは仕事や生活習慣のさまざまな状況の中で生じる筋肉の疲労であって、その原因となる病気はほとんどの場合にありません。しかし大切なことは単に肩がこるだけという場合以外に肩こりを引き起こすもととなる病気、すなわち基礎疾患がその背景に隠れているということも覚えておきましょう。注意するべきことは明らかな痛みを自覚する場合です。特に頭、背中、肩、腕などの痛みを感じるときには医療機関を受診するべきでしょう。肩こり等で一番最初に訪れるのが整形外科となります。整形外科では、主に骨・筋肉・関節・神経・血管などに異常が無いかを診察します。そこで肩こりの基礎疾患が診断されます。まず最初に整形外科等で診察を受け、基礎疾患がないことを確認した上で、なかなか改善の兆しがみられないような場合にはカイロプラクティック・整体・マッサージ・鍼灸などの代替医療などを受けてみることも薦められると思います。
ところで、整形外科以外の病気でも肩こりを生じる病気は多数あります。心因性のストレス、片頭痛、眼精疲労、耳鳴り、めまい、歯のかみ合わせ、更年期障害、高血圧など、すべての診療科目にかかわる病気から肩こりはおこることがあります。適切な診療を受けることにより、このような肩こりは改善していくものです。ですから症状が長引く場合やいつもと違う肩こりの場合には、自己判断をせず、必ず医師の指示を仰ぐようにしましょう。
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2006.11.24

整形外科の外来に訪れる患者さんの訴えの中で多いものの一つが膝の痛みです。
膝の痛みの原因の多くは関節軟骨の変形によるものです。
これを変形性関節症と言います。
関節軟骨の変形は年を取ることや過去の怪我の影響などにより引き起こされ
特に立ったままでも両膝が閉じることのできないようなO脚変形が強い人に生じます。
膝の痛みは関節軟骨や骨、周囲の靱帯や筋肉に炎症によっておこります。
この炎症は時に関節包つまり関節を取り巻く袋の内面にある滑膜という細胞に及びます。膝の水を関節液といいますがこの関節液がたまるのはこの滑膜の炎症が生じるからです。
ですから何か痛みの原因があってその結果として膝に関節液がたまるのであり、膝に関節液がたまるから痛みがあるのではないということを理解しましょう。
多くの患者さんの質問に「膝の水を抜くと癖になりませんか?」というものがあります。
膝の関節液を抜くことによって関節に害を及ぼすということはまったくありません。
関節液には時に血液が混ざっていたり、軟骨のカケラが混ざっていたり、あるいは膿のように濁っていたりすることがあります。そのため関節液を抜いてその状態や量を確かめることが膝の痛みの診断につながることもあります。変形性膝関節症の治療のために傷ついた関節軟骨を修復するヒアルロン酸という注射薬を関節に入れることがあります。関節液が多くたまっている場合はいったん、たまった関節液を抜いてからこのヒアルロン酸を注射します。このような注射は厳密に滅菌された注射器や針を使用して清潔な消毒のもとに行われることが重要です。重症な糖尿病などの免疫状態の悪い患者さんの場合には化膿性膝関節炎という関節内にばい菌が入ってしまう重大な合併症がごくまれに起こります。痛みが楽になるからといって安易に関節注射は行うべきではありませんが整形外科の専門医のもとで決められた回数を確実に関節内におこなえば初期の変形性膝関節症に対しての治療効果は十分に期待できるものと考えられます。
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2006.09.26
高齢者の骨折は転倒によって容易に起こります。高齢者には骨の量が減少した骨粗鬆症といわれる軽微な外力で骨折を起こしやすい状態があるからです。そして骨折を起こしやすいからだの部位も決まっています。前方に倒れた場合は手をつくために肩の部分の上腕骨骨折あるいは手首の骨折が生じます。後方に倒れた場合は背骨の脊椎圧迫骨折が生じます。そして横に倒れた場合は、ももの付け根の部分の大腿骨頚部骨折が起こります。70歳以上の高齢者の寝たきりの原因の1番は脳卒中であり、2番目の原因が大腿骨頚部の骨折といわれています。手首や腕の骨折は外来通院で治療することが可能ですが脊椎の圧迫骨折は時に入院が必要となります。そして大腿骨頚部骨折に至っては寝たきりを防ぐためにほとんどの場合において受傷後のできるだけ早い時期に入院して手術治療が選ばれます。寝たきりを防ぐために高齢者が骨折に対して気をつけることを考えて見ましょう。まず第一に骨折しやすい環境を改善することです。歩行時につまずきやすい段差や滑りやすい場所をなくするよう工夫しましょう。第二に転ばない体づくりをおこなうことです。日頃から、しっかり身体を動かす生活習慣を身につけ、無理なく楽しい運動を続ける事が、身体の機能を維持するために望ましいといえます。最後に骨粗鬆症の薬物治療ですが、最近ではビスホスホン酸という薬が主流になっています。この薬は骨の量を増加させ骨折の危険を減らす効果があることがわかってきています。
薬物治療はかかりつけの先生に必要かどうかを判断してもらい、骨折の予防のためには以上の3つの事を総合しておこなうよう心がけましょう。

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2006.07.23

筋力トレーニングというと若いスポーツマンの運動を連想しますが、中高年者であっても筋力を鍛えることで若い人と同程度の効果が期待できます。ただしトレーニングの原理、原則を理解しておくことが大切です。その原理ですが、まず第一に骨格筋には2種類の筋肉があります。瞬発力を発揮する速筋(ソッキン)。これは漢字で速い筋肉と書きます。そしてもう一つは持久力を発揮する遅筋(チキン)、これは遅い筋肉と書きます。この2つの筋肉のうち速筋の筋線維の方は40歳を過ぎると急激に萎縮、消失していきます。また2つの筋肉は鍛える方法も異なります。速筋を鍛えるにはある程度の強い負荷を与えた「きつい」と感じる無酸素運動です。この際に血圧の上昇が生じることがあり、息を止めてふんばる動作を行うと胸腔内圧まで上昇して危険です。このことを防ぐために強い負荷の筋力トレーニングは息を吐きながら力を出すことが大切です。これは最大筋力の60%ぐらいの力を出して行います。一方、それに対して持久力を担う筋力トレーニングは有酸素運動です。近年介護予防のために要介護者などに対して取り入れられている「パワーリハビリ」という高齢者のための新しいリハビリテーションがこれに当たります。特に普段使っていない筋肉を中心として万遍なく正しい姿勢と動作で疲れを感じないように一定のリズムで行う運動です。この運動は何よりも主観的に「楽である」ということが大切です。運動の負荷を増やしてはいけません。
いずれの筋肉トレーニングにおいても筋力を維持することは、体の基礎代謝を高め身体的および心理的活動性をともに回復させる効果が大きく、自立した生活を送るためには大変重要なことといえます。トレーニングの原理、原則を守り、各自が自分の健康状態や運動能力に応じて正しくトレーニングを行うためにも、トレーニングに先立っては整形外科やリハビリテーションにかかわる医療従事者に具体的なプランを立ててもらうことが必要だと思われます。
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2006.03.29

中学生以下のこどもの骨折についてお話します。
こどもの骨は大人と比べると、形態、性質とも大きく異なります
こどもの骨は太さが成長する部分と長さが成長する部分のそれぞれに骨の素(もと)になる成分が豊富にあります。大人にくらべてカルシウウムの量が少ない反面、コラーゲンや水分が豊富に蓄えられています。このため大人の骨よりもこどもの骨は粘り気のある柔らかい性質を持っています。このやわらかい骨の性質のため、こどもの骨はぽきんとおれるのではなく、ぐにゃっと曲がるのです。幼少から15歳くらいまでの成長期の子供に多い骨折で、若い木のように骨が柔らかいことから、「若木骨折」と呼ばれます。
また特に関節部分にある骨端部というところには成長軟骨といわれるレントゲンでは写らない部分があるのが特徴です。この骨折を子供の場合は「骨端線損傷」と呼びます。注意しなければいけないのは、骨折を疑ってレントゲンの撮影をした際に、この「若木骨折」や「骨端線損傷」はレントゲンのみでは診断が難しいことがよくあるということです。
2-3週間の後に再度レントゲンをとると骨折部に仮骨といわれる新しい骨が出てきて骨が修復される様子がわかり初めて骨折と診断されることもあります。子供は上手に痛みを伝えることができないので、いつまでも痛そうにしているときは、注意が必要と思われます。
特にこどもの肘関節での骨折は比較的頻度が高く、しかも成長軟骨に近いところでの骨折ですので、きちんとした診断の後、ずれた部分をもとに戻す、整復という正しい治療をしないと後々変形が残ったり、成長障害が起こったりします。
こどもの外傷時にはマッサージや電気治療などを漫然と行うのではなく整形外科を訪れて正確な診断を受けるよう心がけてください。
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